言語の螺旋

言語の螺旋
陰陽五行でいうところの水の流れがいいところ

2010年12月17日金曜日

詩「なりあがり舞いあがり」

なりあがりまた舞いあがり

海馬の限界を越えて

ニカワの臭いの絵筆を置いて

誰かの模写でしかないキャンバスにうんざり


非常階段の影では親密な空気

二人だけで完結し明日も繰り返し

夢の中では君とは旅路


フルスロットルのスーパーカブのアクセル

風になびいた肩までのびた髪

知らない地名に発見が

いつか見た風景であることに愕然


田舎の国道でも独り

家に帰ったとしても独り

会いたい君は手の届かないところへ去った

ガソリンもそこをつきかけているのだ

存在を定義する優しさにかけているのだ


ふと口をついてでてくるのはAMラジオの曲

燃焼するガスが排気となって自己主張する


なりあがりまた舞いあがり

懐かしさがこみあげてくるのは君に貸した本

しおりがわりの付箋に一文、告白と

すでに読み終えた文庫本が現在進行形にかわる


めだかを泳がせておいた水瓶

知らないうちに数も増えて自然淘汰

眠られない夜は形而上の水面


繋ぎとめたいだけのネットの電波

最新の書き込みは2時間前

読むのも億劫な指先

顔も知らない誰かのつぶやきに共鳴


アンテナが建っていても独り

家の中でも独り

知りあいたいはずの君にも声が届かない

鉈で叩きつけようが、君はもういないんだ

客観されたくっても誰もいないんだ


牛乳を買い忘れていたことに気付く

雨が降る前の低気圧が豪とうなって窓を揺らすのだった

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