言語の螺旋

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陰陽五行でいうところの水の流れがいいところ

2012年7月14日土曜日

poet「かわいそうなフロッグマン」


「かわいそうなフロッグマン」
葉巻で寝ころがるフロッグマン
カウボーイハットがおちゃめで葉巻
をスパスパ吹いた。

車道を、車が一台、ポンコツのディーゼル
つづく子どもたちの駆け足
葉巻をかくして煙をぼやかす
優雅とはいえないしぐさ。

ブロックの上で甲羅干しのフロッグマン
バスタオルでグラスにコーク
をぐびり、飲んだ。

雌牛が、一頭、よく張った乳
つづくうるさい山羊たち、ベル
葉巻を吸いつけて
どうしようもないと天をあおぐ。

ふと空、大きな黒い雲、よぎる。
葉巻をしまい、カウボーイハットをかぶる
雨をうきうき待っている

大粒の雨の一つを口に入れて、甘い
帽子とチョッキを脱いで
極上の雨だ
激しく雨に打たれながら
あくびが出そうな天気はもういい、ずっと雨でいい
軽くステップを踏んだ♪

ひどい雨
が道路に溢れて、
ポンコツのトラックが立ち往生
大人たちがうんうんうなって押す横を
水牛にのった村人が草笛、通り過ぎる
水牛もこびりついた汚れが綺麗に落ちるから
雨がスキ

散々な濁流の中で、葉巻を一本濡らしてしまった
お気に入りの帽子は守った
仕事を投げた村人たち
は車を放って駆けていき。その手には弁当箱、それも面倒になって放る。
フロッグマンの足元に転がった、
弁当箱だった

ピーマンをかじりながら
暗くなった空の下、じゃんじゃん降りを避けようと
学校のプールの柵へとのぼる
帽子の中にはニンジンとトマト
たまに口をあけて天を見ては
大粒の雨飲む、塩気洗う

止むどころでない雨は
夕暮れなのに真っ暗
フロッグマンの妻や子どもたち怯えてないかな
そろそろ帰ろうかな
帽子をかぶって柵からおりる
すると思った以上に深い草の根
あわてて息つぎをする

ドシャブリの中で
フロッグマンは泳いでる
道路の向こうのヤシの樹の中
ママと坊やたち
渦巻きを避け波を潜りかわし
出てきたら街角の揚げパン屋
流れすぎたフロッグマン

信号の玉も切れちまってさ
グチョ濡れは嫌じゃないさ
ずいぶん流されてしまったな
耳抜きをしても一度チャレンジ
流れに逆らうのはきつくてね

いつだってなるようになると
フロッグマン
カウボーイハットも
ブーツもチョッキもタバコ入れも
どこへだか流れた
拾いモンだからいいけどさ
流れをせき止める一台の大きいバスが
まいったなあ
下手にひっかかると、ケガするぜ

ひとやすみ、バスの高い運転席へ
あきらめた運転手はビールをしこたま飲んで眠る
ビールのおこぼれにあずかる
さて、ねえ
どうやって帰ったもんかねえ
大地とどろかす雷とこれでもかという雨、空光る
まいったね
香菜をアテに
ビールの残りを飲んじまってさ
ふて寝することにしたフロッグマン
〈了〉
虫士 writ`s

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