言語の螺旋

言語の螺旋
陰陽五行でいうところの水の流れがいいところ

2012年5月26日土曜日

「蔑ろにできない封書」


「封書が届く」

封書が届く
蔑ろにできない内容である
整理がつかない頭で
なんとか悶着つけようとしたのであろう
いつもでは見られない几帳面の兆しが
誤った文字列、熟語を
判別できぬほど
重ねて、紙がへこむほど
筆で塗りつぶすという行為に現れている
ポリス
が売春婦のヒールについて叫んでいる
改訂を伸ばす線がはるか枠外にまでおよび
順を追うに難する
湿りかけたココアクッキーの欠片の油が
「善」のインクを半ば溶かしかけて滲ませている
こびりついていたのはきっと
昨日のおやつ
だけなどではなく、一枚目、二枚目、三枚目、で交錯せられた
誠実であろうとして誤解を生まないように気を配ったりした末の
二重敬語の誤用やら、はにかんでソファーについて述べているくだりや、トマトが大粒なのが七ツ採れたことを伝える一連
何処かでお得に何やらを手にいれたなんてことは
はなから興がない
ので
改まった挨拶然り、近未来への希望的観測が、拭いさられようのない紙魚となって
如何様か死後硬直をしはじめた
その
そこにいる
黒い艶々の猫君
それの死後硬直さ加減
かつて、指で呼ぶと、口元をなすりつけて
おのれの臭いをつける生物的示威行動
まぶた細めて、喉を鳴らすこと
シリカゲルを仮想的とみなし、クタクタになるまで戯れる
居間の端のザルが寝床
夏の陽気な女の子のバラード
きっと精妙な言いまわしを書けるほどの冷静があったとしたならば
三枚目
草々の文字は広く滲んで啓名に懸かることなどなかったろうね
折り目も歪に歪むことなどなかったろうね
今一つ、切手が\10分足りないなんて、この世の万事須らく、取るに足りない
気持ちが伝わった
そうしてその
蔑ろにできない封書を
折り目を直して
胸にしまって
そっと息を吐いた
鼓膜にジンと
シャウト残った
〈了〉
wrought byTyu-shi

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