言語の螺旋

言語の螺旋
陰陽五行でいうところの水の流れがいいところ

2012年4月20日金曜日

「祠、神通る道」


「祠、神の通る道」

渦重なる森の中は静謐

鳥居で隔てられた現世と異なる護られた所に

手水

口をゆすぐ

親戚が奉献した石が四角い

3代前の名を刻まれたもの

幼い頃に遊んでもらった干からびた手のひらが顔を撫でていた

苔も干からびて

字も薄い

完らずむくれる

鋭い夏日を除けた樹蔭の木立のうろ

いつまでたっても日ぐらしが

でてこなくってベテランの神主さんの箒の掃き方

除けている、うろを、日ぐらしが深い眠りについているのを刺激してはならないもの

拝殿のもとをおとずれる密かな楽しみです

公共交通機関が発達したことによって敷地が狭まったのですが

温かみや冷え込みなどのたび変化をみせてもらうのが楽しみです

先の台風の折など町の氏子さんたちがおのおの集まってもげそうな枝

老いたいちょうに当て木、添え木、あらかじめの枝払いなどしてくれました

一歳瀬前の鬼瓦が痛痛しくもげ落ちて割れてしまった雪の日のことを思いだします

ガランどうの

宮の奥

で式布と鏡に写してみて

ああいま、悲しいんだな

心が、もげそうなんだな

と思いました

一日が途方もなく長く感じたり枝枝の繁茂が無邪気に空をつかんでいるのをよろこんだりします

大事だと思えるのは雅な金で飾られたものでない、慈しみですね

おしゃまな顔をした着物姿の五歳のミウちゃん

かならず拝殿に向かって歯が生えかわるよ、変わっているよと告げてくれるのも楽しみのひとつ

私がここを訪れるようになってやっと千と五〇年になりました

井戸が枯れ

溜の水が痛んだ時

村ビトが畑の淵から水を汲んできてくれて感慨でした

ある晩

百度石を回っている女

なにやらぶつぶつ祈念しているもので

好奇心から聴いてしまいました玉蜀黍に虫が湧いて売りに出られないとのこと

ははあんこの女、村の奥あたりの日当たりが悪い棚田の方だ

不便するだろうな、夫が窪地を開墾してくれないままなのだな

するとそこへ体躯のしっかりした若ものがあらわれ

挨拶

挨拶

「とぅきびにゃぁぅょぅ、オレッちのおじいの納屋に、酢の甕があるぅよなぁ、なぁ奥さん、旦那にいいつけて取りにこさせるぅとよぉぅ、待ってるぅよぉぅ、分けてあげるから」

僥倖・・・

夕飯には八百益に寄ってタコを買う

海藻と和えて甘酸っぱく

拝殿の正面に向い、段を緊張しながらのぼるいつものように二礼二拍手、一礼

願い事は考えない

神への御挨拶、無言、タコの酢の物がよぎる

きこえているだろうか

きいてくれているだろうか

この肉体が、今日もまた、老廃し新陳代謝を繰り返すゲノムの交換を

蟲 writs 12.04.19



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